経営者のための労働トラブル相談
- 問題社員がいて、どのように対応してよいか分からない
- 社員がトラブルを起こして、どのように対処するべきか分からない
- 残業代を社員に一切払っていないが心配だ・・・
- 問題社員を退職させたいがどうすればもめずにやめてくれる・・・
- 社員が1名でも入れる労働組合に加入した・・
など様々な問題を解決いたします。
意外と身近な「労働トラブル」
みなさん、「労働トラブル」と聞いてどう思われますか?
社には無縁だと思われる方も多いのではないでしょうか。
しかしながら、実際には年々「労働トラブル」が全国的に増加しています。
平成13年10月1日「個別労働関係紛争解決促進法」の運用がスタートし、特に平成20年度は、下記のような報告がなされております。
以下、『平成20年度個別労働紛争解決制度施行状況』(厚生労働省)より抜粋
民事上の個別労働紛争に係る相談内容の内訳は、解雇に関するものが最も多く25.0%、労働条件の引下げに関するものが13.1%、いじめ・嫌がらせに関するものが12.0 %と続いており、解雇、労働条件の引下げ、退職勧奨等に関するものの割合が特に増加した。
申出人は、労働者が98.7%と大半を占めるが、事業主からの申出も100件と1.3%あった。事業所の規模は、10~49人が28.9%と最も多く、次いで10人未満18.4%、100~299人が11.9%となっており、労働組合のない事業所の労働者が66.1%である。
確実に中小企業において「労働トラブル」は増えております。中でも50名未満の事業規模で約半数の労働トラブルが発生しており、未然に防げたかも知れないものも多く見受けられます。
● 就業規則は具体的に
例えば、「解雇」について、就業規則に具体的に明記されていますでしょうか?
懲戒(特に懲戒解雇)は、その事由について「限定列挙」が適用されます。
どんな事由で、どのような種類・程度の処分をするのかを具体的に明記しなければ、不当解雇とみなされる場合がありますので、就業規則で具体的に示す必要があります。今一度就業規則を確認されてはいかがでしょうか。
労使トラブル解決法 Q&A
- 求人に応募してきた人物の採否を面接時に即決していますが、問題は無いでしょうか?
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採否を即決されているということですが、この場合労働契約が有効に成立しているのかが問題となります。 文書で採用を通知しているわけではないようですから、争いのあるところだと思われます。
行政解釈では「単に採用を通知したのみでなく、労働者の労務提供の意思を確認した上で、赴任日、就業場所、初任給などを通知した場合には、労働契約がその時点で有効に成立したものとする」としています。
労働契約が有効に成立していると考えますと、この場合解雇予告手当の支払いが必要となります。
また、新規学卒者の場合の内定は、「就労の始期を学校卒業直後とし、それまでの間、本件誓約書記載の採用内定取消事由に基づく解約権を留保した労働契約が成立したと解するのが相当である」という「解約権留保付労働契約」とされ、会社が一方的に内定を取消すことは解雇権の濫用に当たるという判例も出ています。
いずれにしても、会社の社会的信用を考えると採用取り消しは避けたいものです。面接時には適性を判断し、熟慮の上採用を通知するようにしましょう。
- 当社にはタイムカードがありません、出社・退社の時刻が特定できませんから「サービス残業」の問題は発生しないと思いますが、トラブルになった場合にはどのように取り扱われますか?
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事業主には労働者の労働時間を管理する義務があります。 原則として使用者が現認し記録するか、タイムカード等の客観的な記録を基礎として確認し記録する方法により管理するものとされています。
たとえ労働時間が把握できない、労働者自身の裁量にゆだねられるようなみなし労働時間制を採用している場合においても健康・福祉確保措置として、労働者の勤務状況を把握しておかなければなりません。
労働者が労働基準監督署に申告し、労働基準監督署の調査の結果、過去にさかのぼって残業代を支払うよう是正勧告を受けるといった事例も増えています。
タイムカードがない場合には、労働者側のメモなどが採用される場合もあります。
タイムカードがなく残業をさせているのであっても、その残業が本当に必要なのか業務の見直しを行う、残業申請を提出させるなど、労働時間の把握を行うようにしましょう。
また、時間外手当を定額で設定している場合には、定額を超える部分の残業について追加して時間外手当を支払う必要があります。
- 当社は「36協定」を監督署に届けていますので、「サービス残業」の問題は発生しないと思いますが、「36協定」の位置づけを教えてください。
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「36協定」とは「時間外労働・休日労働に関する協定届」のことで、労働基準法36条が根拠であることから一般にこう呼ばれています。
36協定は協定があるというだけで労働者に時間外・休日労働の義務が生ずるわけではなく、就業規則に「時間外・休日労働を命ずることがある」
旨の規定が必要で、なおかつこれを労働基準監督署に届け出て初めて適法に時間外労働、休日労働が行えるというものです。
万一、労働基準監督署への届出を怠っていた場合、違法に時間外労働をさせているということになります。
36協定の有効期間は最長1年が望ましいとされていますから、1年に一度は協定を締結し、労働基準監督署への届出を行わなければなりません。
有効期間が途切れることのないように期間管理を適正に行う必要があります。
また、労働基準監督署に36協定を届け出ているから時間外手当を支払わなくていいというものではありません。
- 退職する従業員が離職票の退職理由を「解雇」と書いてほしいといってきました、在職中よく働いてくれましたので、希望通りにしてあげようと思います、何か問題はありますか?
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離職票に「解雇」と書けば雇用保険の失業手当が「すぐにもらえる、長くもらえる」ということで、退職する従業員には有利になるかもしれません。 やさしい社長さんは「在職中よく働いてくれたし、退職金もたくさん出せないし・・・」とついつい「解雇」の離職票を作成してしまうという例も聞きます。
しかし、一度「解雇」の離職票を書いてしまうと、その後退職する従業員も「解雇」と書いてほしいと言ってくる恐れもあり、悪循環に陥ってしまいます。
また、「解雇」をした事業所は「解雇」前後1年間は助成金を申請することができませんので、助成金申請を考えている事業所はご注意ください。
- 自己都合退職をした元従業員がハローワークで「退職理由が違う、解雇されたんだ」と言い出しました、どうすれば良いですか?
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ハローワークに対しては、あくまでも「本人の自己都合退職です」という強い姿勢で対応しましょう。
そういう問題が起こらないためにも、退職の際には「退職願」を提出させ、離職票の退職理由欄にサイン・捺印をさせるようにしましょう。
また、本人にその場で書いてもらえるよう「退職願」のフォーマットをあらかじめ用意しておくと便利です。
- 30日後に退職する旨の退職願を提出した従業員が、「年次有給休暇が30日残っているので、明日から30日間、有給休暇を取得します」と言い出しました、これでは担当業務の引継ぎもできません、退職日を遅らせるか、有給休暇を取らせずに出勤させたいのですが、問題はありませんか?
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労働基準法第39条第4項では、「使用者は年次有給休暇を労働者の請求する時季に与えなえればならない」と定めています。ただし第4項但書に「使用者は請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」とあります。
この但書を一般に時季変更権と呼びます。 このケースでは使用者側の時季変更権が認められるかが問題となってきます。
時季変更権は請求した社員が他の時季に年次有給休暇を取得できることを前提としています。 このケースでは退職日を目前にしており、他の時季に年次有給休暇を取得できる余地がありません。従って使用者側の時季変更権は認められないと考えられます。
ただし引継ぎ業務が行われなかったことにより会社が損害を被った場合には、現実的には困難であるかもしれませんが、損害賠償請求をすることは可能です。
以上のことを踏まえた上で退職する社員とよく話し合い、引継ぎを終えた上で取得し切れなかった有給休暇を買い上げる(退職時のみ可能)など、現実的な解決法を探すことが肝要です。
今後このようなトラブルを避けるための方法として、年次有給休暇の一斉付与という方法があります。
有給休暇には5日を越える部分について事業場全体の休業による一斉付与等計画的付与が認められています。 このような方法で正月やお盆などの時期に計画的に取得させるなどして、事前に有給休暇をある程度消化するようにしてはいかがでしょうか。
また、引継ぎに関しては、就業規則に「退職時までに担当業務の引継ぎを行わなければならない」等の規定を設けておくのが賢明です。
- 当社は従業員が9名なので「就業規則」は作成しなくても良いと思うのですが、ご意見をお聞かせ下さい。
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労働基準法89条では、「就業規則」は常時10名以上(パートタイマーやアルバイトも含む)の労働者を使用する場合には作成しなくてはならないことになっていますので、確かに9名であれば作成しなくてもいいことになります。
就業規則は「労働者側の権利を書き連ねているもの、作成するとやっかいになる」という印象を受けられる事業主の方も多いかと思いますが、しっかりした就業規則を作成すれば、社内ルールを整備し、事業主側の「労使トラブルの防衛策」にもなりうるのです。
10名以下であっても作成することをおすすめします。
- 工場と店舗が別の場所になっています、労働条件も異なるので別々の「就業規則」を作っても構いませんか?
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工場と店舗では職種、就業時間等の労働条件がかなり異なっていると思われます。 労働条件が大きく違うのであれば、別々の「就業規則」を作られたほうがいいでしょう。
また、個人ごとに細かい労働条件が違うというのであれば、「就業規則」で大まかな労働条件を取り決め、詳細は「雇用契約書」にゆだねることもできます。
- 当社では、パートタイマーが10人以上働いています、「パートタイマー就業規則」をつくる必要はありますか?
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10人以上ということであれば「パートタイマー就業規則」を作成されることをお勧めします。
「就業規則」には適用範囲は明示されていますか。適用範囲(パートタイマーは除くなど)が明示されていないと、今ある「就業規則」がパートタイマー等すべての従業員に適用されてしまいます。
退職金規定のある会社でパートタイマーが退職金を請求し、適用範囲が記入されていなかったためにパートタイマーにも適用されて退職金をパートタイマーにも支払ったという裁判例もあります。
- 労働基準法に「解雇」の条文が付け加えられたと聞きました、詳細を教えてください。
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平成16年1月1日施行の改正労働基準法の「解雇」に関する改正には4つポイントがあります。
一つ目は、多くの判例で確立されてきた「解雇権濫用法理」が解雇に関する基本的なルールとして明文化され、労働基準法に付け加えられたことです。
解雇権濫用法理とは「それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効となる」というものです。
また、経営不振等を理由として労働者を「整理解雇」する場合の4つの要件が明らかにされました。
「整理解雇」が認められるためには原則として下記の4つの要件のすべてを満たす必要があります。
整理解雇することに客観的な必要があること
解雇を回避するために最大限の努力を行ったこと
人選の基準が合理的であり、かつ、運用面においても合理的に行われていること
労使間で十分に協議を行ったこと
二つ目は、解雇を予告された労働者は解雇前であっても解雇理由の証明書を請求できるようになったことです。
これを労働者から請求された場合、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。
具体的には下記の5つの事項のうち労働者より請求があった事項について証明する必要があります。
- 1. 使用期間
- 2. 業務の種類
- 3. 当該事業における地位
- 4. 賃金
三つ目は、就業規則に「解雇の事由」を明示することが義務付けられたことです。
労働基準監督署に就業規則を届け出る際には「解雇の事由」ができる限り明確に記載されるよう求められることになります。すでに作成している就業規則の退職に関する事項に「解雇の事由」を記載していない場合には、「解雇の事由」を記載し労働基準監督署へ届け出る必要があります。
四つ目は、労働契約締結時に使用者が文書の交付により明示する労働条件の「退職に関する事項」に「解雇に関する事項」が含まれることが明確化されたことです。ただし、明示する内容が膨大になる際には就業規則上の関係条項名を網羅的に示すだけでも構わないとされています。
- 今まで課長だった従業員が「取締役」に就任しました、担当業務の内容は変わりません、このような場合に気をつける点はどのようなことがありますか?
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使用人兼務役員ということであれば、健康保険、厚生年金、労災保険ともに今までどおり労働者として取り扱われます。ただし、雇用保険に加入していた労働者が取締役に就任し、会社の従業員的身分を残している場合には、就任後速やかに「兼務役員実態証明書」等を公共職業安定所に提出する必要があります。
また、社会保険では役員報酬は賃金と合算して標準報酬月額に計算されますが、労働保険の対象(労働保険料や離職票など)となる給与は役員報酬を除いた金額となりますので、賃金と役員報酬との区分けをしっかりしておきましょう。
- 連続して7日間、無断欠勤中の従業員がいます、解雇しようと思いますが問題は有りますか?
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御社の就業規則の解雇に関する規定はどのように定めていますか。まず就業規則の懲戒解雇に関する規定に何日の無断欠勤があったら懲戒解雇する旨定めているのかを確認する必要があります。
例えばその日数を14日と定めていた場合、7日で判断するのは早計でしょう。従業員が退職の意思表示をしていない以上、解雇予告手当を請求される可能性があります。
また、無断欠勤中の従業員に対して出勤を促すための措置は既に講じたのでしょうか。 できれば責任者が従業員宅へ出向き、出勤を促すのが良いでしょう。それでも出勤しない場合、「○○日(就業規則に定められている日)までに出勤しない場合、懲戒解雇する」旨、文書で警告してはいかがでしょうか。
- 労災事故で休業中の従業員が用も無いのに会社に来て雑用をしています、会社は出勤を命じていません、このような場合どう対処したらよいでしょうか?
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休業中の従業員からその期間の賃金を請求される恐れがあります。 しかし労災で休業中の従業員に賃金を払うわけにはいきませんので、出勤しないよう強く命令する必要があります。
そのような事態を避けるために就業規則に「業務により出勤している者以外が職場に立ち入るときは会社の許可を受けなければならない」旨定めておいてはいかがでしょうか。
- 副業でマルチ商法をしている従業員がいます。会社の同僚にも勧めていて、皆迷惑しているようです。どのように対処したらよいでしょうか?
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2つポイントがあります。
一つ目は兼業についてです。多くの会社で就業規則に兼業の禁止を定めており、またこの違反を懲戒の事由に定めている会社もあります。
ただし実際には勤務中に居眠りをするなど著しく怠慢な態度をとるなどのケースでない限り、兼業禁止の規定に違反したことを理由に直ちに懲戒処分をすることは困難でしょう。
二つ目は服務規律の問題です。勤務時間中に会社の同僚をマルチ商法に勧誘するなどの行為を行っているとすれば、職場の風紀秩序を著しく乱していると言わざるをえません。
従って、事業主はまずこれについて注意、指導してはいかがでしょうか。 それでも改善が見られない場合には懲戒することも視野に入ってくるでしょう。